カメラを愛好していると、時々こんなことを言われます。
「今時、カメラって必要なくない?スマホのカメラ機能で充分じゃん!
いや、そんなことないよ!
・・・と反射的に否定してはみるものの、あとになって一人でよくよく考えてみると・・・一理あるかも???
たしかに、iPhoneを筆頭にスマートフォンのカメラは驚くほど高性能化してきました。今や豊かなボケ味だってスマートフォンで撮れる時代。
さて、私たちにカメラというものは必要なのでしょうか?もう不要なのでしょうか?様々な人々の意見を参考に、これを検証してみましょう。
1.「スマートフォンがあれば充分!」な7つの主張。
それではまず、「スマートフォンさえあればカメラなんて不要だよ」という人たちの言い分に耳を傾けてみましょう。
(1)スマートフォンのカメラ機能はとても向上してきている。
(2)むしろ、スマートフォンのカメラ機能のほうが優秀とさえ言える。
(3)スマートフォンならすぐにInstagramやFacebookにアップできる。
(4)スマートフォンで済ませれば荷物が少なくて済む。
(5)スマートフォンのほうが、見知らぬ人にも「撮ってもらっていいですか」と頼みやすい。
(6)若者の写真カルチャーはもっぱらスマートフォンで起きている。
(7)スマートフォンで済ませればお金がすさまじく節約できる。
それでは7つの言い分を詳細に検証してみましょう。
(1)スマートフォンのカメラ機能はとても向上してきている。
たしかに、一眼レフカメラで撮ったのかスマートフォンで撮ったのかわからない写真というのを、近年はよく見かけるようになりましたよね。iPhone写真だけを集めた麗美な写真サイトも話題を呼んでいます。
特にiPhoneのカメラ機能は秀逸で、カメラメーカーが舌を巻くほど。iPhoneは、「自動補正」の編集機能が素晴らしく、撮ったあとの処理が簡単なのも嬉しいメリット。
広域な風景写真では、一眼レフカメラで撮るよりもくっきり撮れる(パンフォーカスが効きやすい)くらいです。
そして、iPhone7あたりからは、ついに背景を大きくボカした写真まで撮れるようになりました!光学ズームさえ出来るようになってきています。
(2)むしろ、スマートフォンのカメラ機能のほうが優秀とさえ言える。
すでに、スマートフォンのカメラ機能のほうが優秀なのではないかと思えることすら、あるくらいです。
例を挙げれば、タッチパネルでのピント合わせなど非常に便利ですね。カメラのオートフォーカス機能では、撮影者がピントを合わせたい被写体を上手く汲み取ってくれないことも多いです。特に、お目当ての被写体の前に草木や金網など配置すると、それをボカして被写体にピントを合わせるというのはなかなか上手くいきません。マニュアルフォーカスなら可能ではあれども、スマートフォンのタッチパネルのほうがはるかに早くて簡単です。
露出の調整などについても、スマホカメラのほうがやりやすいですよね。
(3)スマートフォンならすぐにInstagramやFacebookにアップできる。
カメラを構える理由は、今やたくさんあります。そして近年は、友人知人にシェアすることために撮ることが増えてきています。若者や女性は特にそうでしょう。
カメラで撮る場合は、自宅に戻って写真をパソコンに転送し、画質調整を済ませ、ようやくInstagramやFacebookにアップできます。下手すれば、撮影してから半日くらいは掛かってしまいますよね。
対してスマートフォンの場合、撮ったら画像補正もワンタッチ、すぐさまSNSにアップすることが可能です。
InstagramやFacebookなどにおける写真のシェアは、年々タイムリーさが重要になってきています。カメラ撮影派とスマートフォン撮影派とでは、フットワークの差がどんどん広がっています・・・。
(4)スマートフォンで済ませれば荷物が少なくて済む。
ミラーレス一眼の登場に影響されて、一眼レフカメラもずいぶん小型軽量化しました。しかしそうは言っても、レンズ込みだと1kgくらいはあります。それに対してスマートフォンは、重くても100グラムちょっと。一眼レフカメラの1/10です。ミラーレス一眼と比べても1/3以下!
カメラ用のカバンなど必要ありませんし、重さを気にするということがおよそありません。
写真をたくさん撮りたい場面と言えば、旅行ですよね。旅行は多くの距離を歩きます。これを、1kgの重さを背負うか背負わないかでは、体力消耗もストレスも大きな差になります。
(5)スマートフォンのほうが、見知らぬ人にも「撮ってもらっていいですか」と頼みやすい。
スマートフォンカメラのメリットの1つに、「わかりやすさ」というものがあります。どの機種も大抵は使い方は共通していて、ホームボタンのそばにあるカメラマークをタップすれば、それだけで写真が撮れます。子供でもすぐに撮れますよね。
それに対してカメラは、同じメーカーのものでさえもシャッターボタンの位置がまちまちだったり、ボタンがたくさんありすぎて持つだけでも戸惑ってしまいます。そんなカメラは、通りすがりの人に「撮ってもらっていいですか」と頼むのもためらってしまいますし、頼んでも断られててしまいやすいです。
せっかくの思い出深い場面で写真が残せないのは、痛いですね・・・。
また、スマートフォンの場合は自撮りでの自己解決もしやすいです。
(6)若者の写真カルチャーはもっぱらスマートフォンで起きている。
若者や女性にとっては、この点も重要でしょう。
Instagramや写真加工アプリ「SNOW」などを筆頭に、若者たちの写真に関するカルチャー・ブームは近年、スマートフォンで起きるようになってきています。20万円のプロ向け一眼レフを買って高精細な写真を撮っても、SNOWでキュートな写真を見せ合う仲間たちの輪に加わることはできません・・・。
Instagramなら、カメラで撮った写真も披露できますが、Instagramはタイムリーさが重要なツール。カメラで撮ったものを編集したり転送したりしている間に、ホットなテンションは過ぎ去ってしまいます・・・。Instagramで注目を集めるためには、画質がイマイチであってもスマートフォンで撮って瞬時にアップするほうが、人気者になれます。
ムーヴメントやコミュニケーション、エンターテイメントをエンジョイするということにおいては、スマートフォンのほうがカメラよりも圧倒的に優れていると言えそうです。
若者や女性だけでなく、SNSで広報をしている自営業者やアーティスト、タレント活動している人などにも、同じことが言えます。
(7)スマートフォンで済ませればお金がすさまじく節約できる。
最も痛烈な言い分です・・・。
不況の底が見えず、お金のやりくりに苦心している現代日本においては、とても切実なことです。
カメラも、昔に比べればずいぶん安くなりました。高機能がウリである一眼レフカメラさえ、50,000円前後でも購入することが可能です。とはいえ、本格的にカメラをたしなむとなると、ボディ1台レンズ1本では済まないのが実情・・・。
中級者でもレンズは3本以上持つといいますし、予備バッテリーや三脚など、必須な周辺機器は増えていきます。そして、カメラが好きになってしまえば絶対に、2台、3台と欲しくなってしまい・・・。
パソコンやデータ保持用のHDDなども、カメラ向けに大容量のものが必要になってしまうでしょう。
こうして、10年もカメラ愛好者を続けると、多くの人は、カメラ趣味支出で200万円くらいにはなってしまいます・・・。
それに対して、スマートホンで写真趣味を済ませるなら、ほとんど出費はありません。スマートフォンも近年は高くなってきましたが、生活必需品なのでどのみち買わなくてはならないもの。趣味出費とは言えません。
古くなったスマートフォンを買い換える旦那に対して、「ムダ遣いしないで!」と止める奥さんはいないですよね。
すると、もし写真趣味をスマートフォンで済ませるなら、10年間で200万円もお金が浮くということになります!
200万円!世界一周旅行ができてしまうほどの高額です!!
2.「やっぱりカメラはあったほうが良い!」と思える7つ主張。
こうして検証してみると、たしかにカメラなんぞ不要な気もしてきました。しかし、そう決めつける前に「やっぱりカメラはあったほうが良いよ!」と言う人々の主張も検証してみましょう。
(1)やはり本格カメラのほうが画質がキレイで気分がいい。
(2)SS、F値・・・様々な技法はカメラならでは。
(3)フリー素材のサイトに、撮った写真を売れるかもしれない。
(4)プロになったり写真集を出したりするには、やはりカメラが必須。
(5)カメラは高尚な趣味・芸事の一つ。胸を張れるし人生を豊かにしてくれる。
(6)屋外での撮影が多い人は、光学ファインダーのあるカメラのほうが良い。
(7)スマートフォンで兼ねようとすると、充電が持たなくなってしまう。
それではこちらも、7つの言い分を詳細に検証してみましょう。
(1)やはり本格カメラのほうが画質がキレイで気分がいい。
スマートフォンカメラの性能がすこぶる向上しているのは、まぎれもない事実です。とはいえやはり、一眼レフやミラーレス一眼カメラで撮った写真のほうがキレイなものが多いでしょう。
スナップ写真を目的としている人にとっては、大好きな仲間たちと有名な観光名所が写っていれば、とりあえず満足と感じるかもしれません。が、風景やポートレート、迫真のスポーツなど撮りたい人にとっては、やはり本格カメラで撮影された精密な写真のほうが満足できます。
(2)SS、F値・・・様々な技法はカメラならでは。
シャッタースピードを遅くして滝の水流を華麗に写したり、夜の高速道路をSF映画のようにサイバーに写したり・・・写真を見て「すごい!」と驚くようなテクニックは、本格カメラでないと撮れないものが多いです。
技法そのもので人を喜ばせたいのであれば、やはりスマートフォンではなく本格カメラを使って撮ったほうが良さそうです。
(3)フリー素材のサイトに、撮った写真を売れるかもしれない。
メディアの中心がインターネットに移行した今、写真の入手はインターネットのフリー素材サイトから得るのが一般的になってきています。そしてこうしたサイトは、一部のプロカメラマンだけではなく、初心者を含めアマチュアカメラマンにも広く門戸を開放して、素材を募集しています。
しかし、写真フリー素材の業者は、スマートフォンで撮影した写真の登録は受け付けていないところがほとんどなのです。スマホ写真を許可している業者であっても、やはり本格的なカメラで撮った美しく大きな写真のほうが、より多く販売できるでしょう。
(4)プロになったり写真集を出したりするには、やはりカメラが必須。
カメラ周りに高いお金を出す人の中には、「カメラのプロになれたらいいなぁ」と希望を抱いている人も少なくないはずです。
世間の多様化から、プロカメラマンを欲しがる現場は方々に増えていますが、それでも「iPhone写真でイイですよ」と手軽なことを言う依頼主は見たことありません。まったく居ないということもないのでしょうが、ほとんどゼロに等しいでしょう。小説家やライターはiPhoneのフリック入力でも仕事ができますが、カメラマンは本格的なカメラがなければ仕事になりません。
近年は、企業から雇用依頼を受けなくても、電子書籍や自費出版といった形で写真集を販売することも可能になってきてはいます。しかしそうは言っても、「スマホ写真です」では箔が付きません・・・。大衆を感動させるためにはやはり、立派なカメラで撮ることが重要だと言えるでしょう。
(5)カメラは高尚な趣味・芸事の一つ。胸を張れるし人生を豊かにしてくれる
カメラは、単に出来事や思い出を記録するための媒体なだけではありません。アーティスティックな表現を追求したり、細かな技術を磨いたリする、芸事の1つです。芸術の1つです。人に胸を張れる、高貴な趣味ですよね。
芸術や芸事を探求する上で、軽量さやコストパフォーマンスにこだわる人はいません。人生を豊かに彩ってくれたり、日々を楽しくしてくれているなら、荷物が少々重くなろうが、お金が少々かかろうが、決して悪いことではありませんよね。
(6)屋外での撮影が多い人は、光学ファインダーのあるカメラのほうが良い。
カメラに詳しい人は、スマートフォンカメラの決定的な弱点を知っています。それは、スマホの液晶画面で視認しながら撮る場合、昼間の野外の日射しの下ではまぶしすぎて、良い構図が決めづらいのです。
ポータブルオーディオの液晶画面が、日中屋外ではまぶしくて白光りし、楽曲選択や早送りができずに困惑した経験を持つ人は多いはずです。それと同じことが、スマホカメラで撮影する際も多用してしまいます。レンズに何がどのように写っているのか、スマホカメラではよくわからないのです。
(7)スマートフォンで兼ねようとすると、充電が持たなくなってしまう。
実際にこうした目に遭って、大変な思いをした人も多いことでしょう。
スマートフォンは目覚ましく多機能になりましたが、だからこそ、何でもかんでもスマートフォンで行おうとすると、すぐにバッテリーが切れてしまいます・・・。日常的な外出のちょっとしたスナップなら問題にはならないでしょうが、旅行では厳しいものがあります。旅行ともなれば、、写真好きな人は1日に100枚も500枚も撮影するので、するとホテルに帰る前に、バッテリーは空っぽに・・・。家族と待ち合わせしているのに、バッテリーがなくて連絡もできず右往左往、なんてことになっては重大事ですね。
写真撮影は特にバッテリー消耗が激しいので、スマートフォンが持つ機能の中で、カメラは最も、専用機械を持っておいたほうが良いです。
3.「スマホで充分」VS「カメラ必要」、結論は?
さて、では結論としては、写真撮影はスマートフォンだけで充分なのでしょうか?それとも、やはり立派なカメラがあったほうが良いのでしょうか?
その答えは、「環境・ニーズによって人それぞれ異なる」と言えます。
カメラで、シャッタースピードやF値を調整してテクニカルに撮影することを好む人には、カメラはこれからも必要でしょう。それは書道の筆のようなもので、どれだけスマホのカメラ機能が進化しても関係のないことです。
対して、「思い出を残す」「目立つ写真を撮る」といったことが目的なら、もうカメラにこだわる必要はありません。スマートフォンカメラのクオリティは高く、その進化はまだまだ続き、超小型ボディで背景ボカしもタイムラプス撮影も秀逸にこなすようになっていくので、スマートフォンのほうが良いとさえ言えるでしょう。