Airbnb(エアビーアンドビー)や農家民泊などの民泊を経営したいと思ったとき、最も頭を悩ませるのは、法律の問題ではないでしょうか?民泊は、旅館業法の管理下にあります。
結論から言えば、必ずしも旅館業法の許可を取得しなくても民泊は可能ではあるのですが、安全に経営したい場合、特に、自宅民泊ではなく賃貸物件などでビジネスチックに営みたい場合には、旅館業法を完全無視するのは、利口とは言えません。
どのような場合に、旅館業法の許可が必要になるのでしょうか?旅館業法の許可は、どうすれば得られるのでしょうか?
今回は「旅館業法と民泊」について、どこよりも詳しくわかりやすく、まとめています。
1 ホームステイ型民泊なら旅館業法の許可は要らない!
法律の話は本当に難しく、特に民泊に関しては公的機関ですら見解が食い違っているほどで、絶対的な定義を解説するのは不可能・・・。
そこで、まずは要点から入っていきましょうか。
あなたの営む民泊が「ホームステイ型民泊」なのであれば、旅館業法の許可は不要と考えて大丈夫です。
1-1.ホームステイ型民泊は長いこと、国から容認されてきた。
ホームステイ型民泊なら旅館業法の許可は要らない。
なぜかと言えば、それは、長い歴史が物語っています。民泊というのは近年になってよく耳にするようになった言葉ですが、その概念自体は昔からずっとありますね。ホームステイという言葉を聞いたことがあるでしょう?外国人留学生を家庭でお世話してあげる取り組みのことですが、これも多くの場合、お金の受け取りが発生していますし、繰り返し行われますが、しかし逮捕されたホストファミリーなど誰一人いません。
咎められないどころか、国立の大学や公立の高校でさえ、ホストファミリーの募集を行っていますし、学校以外のホストファミリーを束ねる機関のほとんどは、官公の認可を受けたしっかりした団体です。
留学生ホストファミリーは、無償なこともありますが、多くはきちんと報酬を受け取っています。お金のやり取りがあり、Airbnb(エアビーアンドビー)などと同じですね。学校や協会のホームページでも、「報酬がある」ということは伏せたりしていません。
1-2.農家民泊も2000年過ぎから規制緩和の恩恵を受けている。
農家民泊についても同様なことが言えるのです。
農家民泊の場合、無許可での営業が認められるケースは少ないですが、規制緩和は2003年から毎年のように進んできました。旅館業法だけでなく他の法省までが耳を傾け、規制緩和に協力しているほど。
結果的に農家民泊は、防火加工が義務付けられるわけでもなくトイレの数が義務付けられるわけでもなく、衛生管理や緊急時対応などで自治体の規定に応じれば、普通の民家で営むことができるようになっています。
1-3.ホームステイ型民泊が訴えられるのは、「迷惑をかけたとき」。
一般的にホームステイ型民泊は、旅館業法やその他の法的な規制を受けません。訴えられることがあるとすれば、それは「迷惑をかけたとき」。やはり、騒音や汚破損などで近隣住民に迷惑をかけてしまえば訴えられることもありますが、その際も、旅館業法云々というよりも、「マンションの管理規約に反している!」といった訴えになるのがもっぱら。
そう。一軒家であればなおさら、ホームステイ型民泊は安心です。
1-4.マンションや賃貸なら、法律に無頓着でよいわけじゃない・・・。
「ホームステイ型民泊なら安心」と言っても、それはあくまで、旅館業法に関する話。世の中には法律以外に「法令」という制限もたくさんあり、それらを考慮する必要はあります。
民泊でよく問題になるのは、以下の2つの法令です。
(1)マンションや団地などの管理規約に違反している。
(2)不動産物件の又貸し禁止規約に違反している。
マンションなど集合住宅の多くは、民泊に類する事業を禁止しているので、必ず管理組合に確認を取りましょう。また、賃貸物件は原則的に又貸しが禁止されています。とはいえこの2つは、交渉や相談によっては許可を得られる可能性があるので、掛け合ってみる価値はありますよ!お住まいがマンションや賃貸でもあきらめないでくださいね。
1-5.「ホームステイ型」民泊とは?我が家で営む普通の民泊のこと。
ちなみに、「ホームステイ型民泊」とはどのようなものを指すのでしょうか?
これはAirbnb(エアビーアンドビー)民泊の台頭に伴って生まれた言葉で、「家主不在型民泊」と対比して使われるもの。
留学生ホームステイのように、住んでいる家の一室などをゲストに開放し、一緒に共同生活をしながらもてなす形の民泊を指します。要は「普通の民泊」のことで、「ホームステイ協会に登録する」などといった意味ではありませんし、特別な資格も登録も要りません。
1-6.「旅館業法の許可は不要」と言い切るのは、厳密にいえば、危ない・・・。
厳密に言えば、ホームステイ型民泊も、「旅館業法の許可は不要」と言い切れるものではありません。
この最終的な決定に大きな影響力を持つのは「旅館業法」そのものと、厚生労働省の見解です。
旅館業法の第一条では、「間借りなどは貸室業・貸家業であって旅館業には含まれない」と書かれており、「間借り」を辞書で調べると、「代金を払って他人の家の一室を借りること」とあります。ホームステイ型民泊の状態はまさしくこれですよね。旅館業法の定義としては、ホームステイ型民泊は自由に行ってOKなのです。
しかし厚生労働省の見解は違なるもよう。厚生労働省の公式ホームページの中で、民泊に関するQ&Aがありますが、ここでは「個人が自宅の一部を利用して行う場合であっても、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業には旅館業法上の許可が必要。」という記載が。
現在の日本の実情として、「旅館業法上は合法」「ホームステイ型民泊には寛大な目が向けられている」「ホームステイ型民泊は大幅な規制緩和の方向に進んでいる」という事実があるにすぎません。
1-7.2017年の民泊新法制定を待てば、厚生労働省からも合法のお墨付きが得られる!
とはいえ、このグレーな状態も2017年までの辛抱ですよ。
2017年に、「民泊新法」という民泊専用の法律が制定・施行される予定になっています。ここでは民泊に関する規制が大幅に緩和されますし、従来の旅館業法の許可を取る(物件をリフォームする)必要性がなくなると発表されました。
以降は、各自治体に「届け出」が必要となるのですが、これは「旅館業法の許可」よりもずっとずっと簡単なもの。良識的なルールを守り、「民泊やります」と書面で報告する程度のものになりそうです。
家主不在型民泊の場合はもう少し複雑なので、そちらの方々はご注意ください。
1-8.「民泊新法」制定後も、「上乗せ条例」にはご注意を!
「民泊新法」制定後も、気を付けなければならないこと・ケースはあります。
トピック≪1-4.マンションや賃貸なら、法律に無頓着でよいわけじゃない・・・。≫で、マンションの場合や賃貸物件の場合はそれらの持つ規制が生じるということを書きましたね?
こうしたローカルルールを「上乗せ条例」と言いますが、各地・各マンションなどのローカルルールは、民泊新法制定後も効力を持ちますし、国の法である民泊新法よりも強い影響力を持ちます。
上乗せ条例は他にも、市区町村の条例が該当しますが、これも要注意!市区町村単位で民泊を禁止するところは、少しずつ増えていくかもしれません。