2 家主不在型民泊でも旅館業法の許可が不要なケースってあるの?
さて、ここからは家主不在型民泊に関する話に移っていきましょう。
一般的に、家主不在型民泊は法的規制が厳しいのですが、はて、家主不在型民泊でも旅館業法上の許可が不要なケースはあるのでしょうか?
2-1.友人知人を泊めるだけなら、お金をもらっても旅館業法の許可は要らない!
友人知人、親戚などを泊める場合には「営業行為」には該当しないので、旅館業法の許可がなくてもお金を頂戴しながら民泊させることは可能です。
たとえば、こんなケースならある程度商売として成立するかも?
(1)避暑地などに建てた別荘を、使わないときに友人・知人に有償で貸す。
(2)FacebookなどのSNSで「知人限定です」と銘打って宣伝し、実際に面識や親睦のある人だけに限定して有償受け入れをする。
(1)は、民泊のために物件を建てたわけではないので先行投資が大きいわけでもなく、ファミリー利用・グループ利用なら1泊につき万単位の値段でも高くはないので、それなりの収益にはなるでしょう。
(2)は、顔の広い人であり、かつ空港の近くや観光地に位置しているならそれなりの収益にはなるかもしれません。
2-2.民泊特区のエリア内で規定に沿って運営するなら、旅館業法の許可が要らない。
次に考えられるケースは、「特区民泊」です。民泊に興味をお持ちであれば、おそらくこの言葉も聞いたことがあるでしょう。
2-2-1.民泊特区でも、民泊特区の規定は守らなければならないので要注意!
日本政府が定めた「民泊特区」に関しては、旅館業法の許可がなくても民泊を営むことは可能ですよ。とはいえ、民泊特区なら無条件で経営できるわけではなく、民泊特区なりの規定がありますから、それは守らなければなりません。
2-2-2.特区民泊の要件は?
国家戦略特別区域法施行令に規定されている特区民泊の要件、このようになっています。なお、特区民泊の要件説明について、要件の足りていない民泊情報サイトがとても多いのでご注意を!
(1)一居室の床面積が25㎡以上であること(ベランダは含まない)。
(2)出入り口や窓は、カギをかけることができるものであること。
(3)居室と他の居室や廊下などとの境は、壁づくりであること。(出入り口や窓を除く。)
(4)換気、採光、照明、防湿、排水、暖房および冷房について適当な設備を有すること。
(5)キッチン、浴室、トイレおよび洗面設備を有すること。
(6)寝具、テーブル、いす、収納家具、調理のために必要な器具または設備、清掃のために必要な器具を有すること。
(7)賃貸借契約およびこれに付随する契約に基づいていること。
(8)最低日数は2泊だが、地域の条例の定める範囲に従うこと。
(9)業務内容の一部に宿泊事業を含んでいること。
(10)民泊営業を近隣に説明すること。近隣からの苦情窓口を設置すること。
(11)チェックイン時に滞在者の本人確認を行い、名簿を作成し、保管すること。(=事実上有人チェックイン対応)
(12)滞在中、少なくとも1回は、適切な使用がなされているか状況確認をすること。
(13)チェックアウト時も滞在者の本人確認を行うこと。
(14)英語での施設案内(防災案内など含む)を徹底すること。
(15)消防法に適合していること。
(16)自治体の条例にも適合していること。
一般的にはオーソドックスな民泊施設で問題なさそうですが、注意ポイントが6つほどありますね!
注意1.ワンルームの場合25㎡に満たない部屋も多い!
注意2.特区民泊の政令上は最低日数が6泊から2泊に緩和されたが、地域の条例の決定が優先されること。
注意3.民泊特区内であっても市区町村やマンション、物件オーナーが民泊を認めないなら経営できない。
注意4.市区町村が認めていても、用途地域が旅館営業を禁止しているエリアは経営できない。
注意5:チェックインは有人対応をするか、高額なカメラ&IoT設備が必須!
注意6:物件によっては消防設備の設置に莫大なお金がかかる。
意外と規制は多いので、民泊特区内であっても条件をすべて満たしているかどうか、慎重に検討してくださいね。
2-2-3.民泊特区に該当する地域はどこ?
民泊特区は、2016年末現在ではまだまだ多くありません。民泊特区と同時に聞かれることの多い国家戦略特区という言葉ですが、国家戦略特区がすなわち民泊特区というわけではないのでご注意を!国家戦略特区の市区町村なら民泊特区に参入する権利があるというだけです。
現在の民泊特区:東京都大田区、大阪府の一部、福岡県北九州市。
民泊特区を検討中:神奈川県、千葉県、兵庫県。
他にも名古屋市など、経済活動に積極的な都市や空港に近い都市などは、民泊特区に参入していくかもしれませんね。
2-3.「民泊新法」の制定後は、家主不在型民泊も旅館業法の許可が要らない。
たびたび上述してきた「民泊新法」が成立された暁には、家主不在型民泊においても旅館業法の許可を取得せずに民泊経営が営めるようになります。
2-3-1.新法民泊でも、少なからずの規制はある。
民泊新法は、特区民泊よりもさらにハードルが低くなりそうですが、家主不在型民泊の場合は利益確保の面で致命的な不安が・・・。まずは、新法民泊の定める要件をご紹介。
(1)現在検討中の「一定の要件」を満たすこと。
(2)民泊施設管理者(民泊代行業者のようなもの)に業務を委託すること。そしてその管理者は、下記の項目を遂行しなければならない。
(3)利用者名簿の作成や保存。(外国人利用者の場合はパスポートの保存が必要。)
(4)最低限の衛生管理。
(5)利用者に対しての注意事項の説明。
(6)住宅の見やすい場所への標識設置。
(7)苦情の受付。
(8)当該物件に対しての法令・契約・管理規約違反の確認。
2-3-2.「一定の要件」で予測される内容は?
「一定の要件」に関しては、いまはまだ制定・議論の最中で、決定していません。とはいえ、たびたび報道される規制改革会議の内容で、ある程度の推測は可能です。
(1)営業日数が年間「180日以内」に制限される?
(2)宿泊人数が4~8名程度に制限される?
なお、(1)の「180日以内」については、「180日以内で議論中」という意味。つまり、もっと少ない日数に制限される可能性もあります!他国の例を見ると、イギリスでは年間90泊、アムステルダム(オランダ)では年間60泊といった日数になっており、この程度の日数まで制限される可能性も・・・。